建設業オーナーが「相続」で見落としがちなこと──許可・自社株・経審の承継

「相続なんてまだ先の話」——建設業を経営されている方からよくそう言われます。ですが、建設業オーナーの相続は、一般的な相続とは違う難しさがあります。個人の財産だけでなく、建設業許可・自社株・経営事項審査(経審)の点数という、事業そのものの承継が絡んでくるからです。

私自身、現場歴20年以上・経営10年以上という立場から、この「事業と相続が一体になっている」ケースの難しさを日々感じています。

目次

許可は自動的に引き継がれない

建設業許可は、先代が亡くなったからといって自動的に後継者へ引き継がれるものではありません。個人事業として許可を受けていた場合と、法人として許可を受けていた場合とで、承継の手続きも注意点も変わってきます。特に個人事業から法人成りを予定している場合は、許可の切り替えタイミングと相続のタイミングが重なると手続きが煩雑になりやすい部分です。個人事業から法人化する際の注意点については、こちらの記事でも詳しく触れています。

自社株の分散リスク

後継者以外にも相続人がいる場合、自社株が分散してしまうリスクがあります。経営権を後継者に集中させたいのであれば、生前からの対策が必要になりますが、これは会社法・税務が絡む領域でもあるため、行政書士だけで完結できる話ではありません。税理士・司法書士との連携が前提になる部分です。

経審の点数にも影響する

経営事項審査は、経営者の交代によって点数構成が変わることがあります。特に経営業務の管理責任者(経管)の要件は、後継者がその実務経験を満たしているかどうかで大きく変わってきます。経審の基本についてまとめた記事でも触れましたが、承継のタイミングを見誤ると、思わぬ点数の落ち込みにつながることがあります。

現場を知っているからこそ気づけること

相続の専門家は数多くいますが、「事業承継後、現場が実際にどう回るか」まで見えている専門家は多くありません。許可の要件や経審の点数だけでなく、「その後継者が現場を実際に回せるかどうか」という視点は、現場出身だからこそ持てる感覚だと思っています。

対応できる範囲について

遺言書の作成や、争いのない遺産分割協議書の作成は行政書士の業務範囲ですが、相続人間で争いがある場合の代理交渉は弁護士の、相続税の申告は税理士の、不動産の相続登記は司法書士のそれぞれ専門領域になります。私自身、こうした専門家と連携しながら対応していますが、連携先を選ぶ際に重視しているのはレスポンスの速さです。相続の相談は、亡くなった直後の慌ただしい時期に発生することが多く、返信の遅い専門家に繋いでしまうと、ただでさえ大変なご心労の中、ご家族のご不安が無駄に長引いてしまいます。だからこそ、実務のスピード感を共有できる専門家とだけ連携するようにしています。

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