「口約束」が会社を守らない理由 ― 現場20年、経営10年以上の経験で伝えたい契約書の話

目次

はじめに

建設業を経営されている方の中には、「下請けさんとは長い付き合いだから」「信頼関係があるから」という理由で、契約書を簡単な発注書一枚、あるいは口頭の約束だけで済ませているケースが少なくありません。

私自身、現場で20年、すみれ建装を10年以上経営してきた中で、この「信頼関係だけに頼った契約」がどれほど危ういものか、身をもって経験してきました。今日は、その経験から契約書作成の重要性についてお話ししたいと思います。

ある事案で経験したこと

以前、ある下請け業者に工事の一部を依頼した際、施工に明らかな手抜きが見つかったことがありました。やり直しを求めても誠実な対応がなく、最終的には法的手段に訴えざるを得ない状況になりました。

このとき、結果として有利な解決に至ることができた大きな理由のひとつが、契約書に『損害賠償の予定条項』や『違約金の定め』をあらかじめ盛り込んでいたことでした。

手抜き工事や債務不履行が起きた場合、何も定めていなければ、損害の発生や金額を一つひとつ立証しなければなりません。これは想像以上に手間と時間がかかり、相手が誠実に対応しない場合はなおさらです。しかし契約書の段階で「このような不履行があった場合は、これだけの損害賠償・違約金を支払う」とあらかじめ取り決めておくことで、立証の負担が大きく軽減され、交渉や訴訟を有利に進めることができました。

これは机上の理論ではなく、実際に現場を経営してきた人間として体感したことです。

なぜ「いつもの取引先」こそ契約書が必要なのか

「長年の付き合いだから大丈夫」という関係ほど、実は契約書が後回しにされがちです。しかし、トラブルが起きるのはむしろこうした”気の置けない”関係の中だったりします。

契約書は、相手を疑うための道具ではありません。むしろ、

  • 何かあったときに「言った・言わない」の水掛け論を避けるため
  • お互いの責任の範囲をはっきりさせておくため
  • いざというとき、自社を守るための備えとして

機能するものです。普段は出番がなくても構いません。「もしも」のときに会社を守ってくれる、いわば保険のような存在だとお考えください。

契約書に盛り込んでおきたい主なポイント

業種や取引内容によって異なりますが、特に建設業の下請け契約においては、次のような条項が重要になります。

工事内容・範囲の明確化はもちろんのこと、検収・完了の基準、契約不適合(瑕疵)があった場合の対応、そして今回お伝えした損害賠償の予定や違約金の定めも必須事項です。トラブル時の交渉力を大きく左右するからです。支払条件や契約解除の要件についても、曖昧なまま進めてしまうケースが多く見られますが、しっかりと定めておくことをお勧めします。

これらは一般的なひな形をそのまま使うだけでは、自社の実態に合わないことも珍しくありません。実際の工事内容や取引の流れ、起こりうるリスクを踏まえたうえで、オーダーメイドで条項ひとつひとつを検討する必要があります。

現場を知っているからこそ、できること

契約書の作成というと「法律の専門家に任せる仕事」というイメージが強いかもしれません。もちろん法的な正確性は欠かせませんが、それだけでは現場で本当に使える契約書にはならないと感じています。

私はすみれ建装の経営者として、現場で実際に何が起こりうるか、どこでトラブルが発生しやすいかを、自分自身の経験として知っています。建設業許可や宅建業免許の手続きと並んで、こうした「現場の言葉で考える契約書作成」を、すみれ法務事務所のサービスの柱のひとつにしています。

現場20年、経営10年以上。現場の言葉で話せる。だから、話が早い。

これは私自身の経験から自信を持ってお伝えできることです。

おわりに

「うちは大丈夫」と思っていても、トラブルは想定していないところからやってきます。今お使いの契約書(あるいは発注書)が、本当に会社を守れる内容になっているか、一度見直してみませんか。

なお、契約書で押さえるべきポイントは、立場によって変わってきます。施主の立場から契約書を見直す記事や、元請けが施主・下請け双方のリスクを防ぐための記事もあわせてご覧いただくと、契約書全体の構造がより見えてくるはずです。

契約書の新規作成はもちろん、既存の契約書のチェック・見直しのご相談も承っております。お気軽にお問い合わせください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次