建替えの『5分の4』の壁、2026年から低くなる?緩和の条件をわかりやすく解説

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「建替えたくても進まない」を変えるための改正

前回の記事で、2026年4月に区分所有法(マンションのように、一つの建物を複数の人がそれぞれ部屋ごとに所有している建物のルールを定めた法律)が改正されることをお伝えしました。今回はその中でも特に注目度の高い「建替え決議の要件緩和」について、掘り下げていきます。

建替え決議とは何か

マンションを建て替えるかどうかは、区分所有者(部屋を所有している人)全員の合意ではなく、「建替え決議」という集会(総会)での多数決によって決めることになっています。全員の同意を取るのは現実的に不可能に近いため、法律があらかじめ「これだけ賛成が集まれば建替えを進めてよい」という基準を定めているのです。

これまでは「5分の4」の賛成が必要でした

現在のルールでは、区分所有者の人数と、議決権(持っている部屋の広さなどに応じた投票権)の両方について、それぞれ5分の4以上の賛成がなければ建替え決議は成立しません。マンションの戸数が多くなるほど、この5分の4を集めるのは簡単ではなく、一人でも多く反対や無関心な人がいると、建替えの話がまったく前に進まなくなってしまいます。これが、老朽化が進んでいても建替えに踏み切れないマンションが増えている大きな原因の一つです。

2026年4月から、条件付きで「4分の3」に緩和されます

2025年5月に成立した改正法(正式名称:老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律の一部を改正する法律)により、2026年4月1日から、一定の条件を満たすマンションについては、建替え決議の要件が5分の4から4分の3に引き下げられます。条件に当てはまらない通常のマンションについては、これまでどおり5分の4のままです。緩和されるのは、次の5つの「客観的事由」のいずれかに該当する場合に限られます。

緩和の対象になる5つの「客観的事由」

耐震性が不足している場合

建物の耐震性能が、法令で定められた基準を満たさないなど、地震に対する安全性が不足している場合が該当します。

耐震診断などによって建物の耐震性能を確認し、定められた基準に該当することを確認する必要があります。なお、「旧耐震基準のマンションである」というだけで、直ちにこの要件に該当するわけではありません。

火災に対する安全性が不足している場合

火災が発生した際の延焼防止や避難などについて、建物が法令上求められる安全性を確保できていない場合が該当します。

単に建物が古いというだけではなく、建物の構造や防火・避難に関する状況を確認し、定められた基準への該当性を判断することになります。

外壁等の剝落により、周辺に危害を及ぼすおそれがある場合

外壁のタイルやコンクリート片などが剝落し、マンションの周辺にいる人などに危害を及ぼすおそれがある場合が該当します。

外壁等の劣化状況を調査し、法令上定められた基準に該当するかどうかを確認します。単に「ひび割れがある」「築年数が古い」といった事情だけで、直ちに該当するものではありません。

給排水設備等の腐食等により、衛生上有害となるおそれがある場合

給排水管などの腐食や劣化によって、漏水その他の問題が生じ、衛生上有害となるおそれがある場合が該当します。

設備の劣化状況について調査を行い、定められた基準に該当するかどうかを確認することになります。

バリアフリー基準に適合していない場合

高齢者や障害者等の移動に関する安全性を確保するための基準に、建物が適合していない場合が該当します。

単に「段差がある」「エレベーターがない」という事情だけで判断されるものではなく、対象となる経路や設備について、定められた基準への適合状況を確認する必要があります。

5つの事由のうち、一つでも該当すればよい

これらの5つの事由は、すべてを満たす必要はありません。

マンションが法令上定められた5つの事由のいずれかに該当する場合には、一定の要件のもとで、建替え決議に必要な賛成割合が従来の「5分の4以上」から「4分の3以上」に緩和されます。

ただし、「古い」「修繕費が高い」「住みにくい」といった事情だけで、直ちに4分の3の決議が可能になるわけではありません。

私自身、外装劣化診断士(建物の外壁の劣化状況を診断する資格)・1級建築施工管理技士補として現場で外壁を見てきた経験からお伝えすると、③ の「外壁等の剥落により周辺に危害を生ずるおそれ」は、見た目だけで判断するのが難しいケースが少なくありません。ひび割れが小さくても内部の鉄筋が錆びて膨張し、いつ剥落してもおかしくない状態のこともあれば、逆に見た目が悪くても構造的には当面問題ないケースもあります。

そのような経験をふまえ、専門家による診断に立ち会う業務も行っております。

建替え決議以外にも、同じ考え方が使われています

今回の改正では、建替え決議だけでなく、マンションを取り壊す決議や、建物・敷地をまとめて売却する決議についても、同じ5つの客観的事由があれば要件が緩和される仕組みになっています。団地(複数棟のマンション群)の一括建替えについても、別の緩和ルールが用意されています。この記事では、一棟のマンションの建替え決議に絞って解説しました。

決議要件が緩和されても、別の壁が残っている

決議の要件が緩和されても、実際には「連絡が取れない所有者がいて、そもそも決議の分母に入れるべきかどうかわからない」という壁にぶつかる管理組合が少なくありません。この点については、同じ改正で「所在等が不明な区分所有者を決議の母数から除外できる」制度も新しくできました。こちらについては次回の記事で詳しく取り上げます。


まとめ

  • 建替え決議は、区分所有者・議決権それぞれ5分の4以上の賛成が必要というのが、これまでのルールでした
  • 2026年4月1日から、①耐震性不足、②火災安全性不足、③外壁剥落のおそれ、④給排水管の著しい腐食、⑤バリアフリー基準不適合、のいずれかに該当する場合は、要件が4分の3に緩和されます

専門家からの一言

建替え決議の話になると、つい「5分の4」「4分の3」という数字にばかり目が行きがちですが、現場で20年以上、建物を見てきた立場から言うと、本当に大事なのは「うちの建物が本当にその客観的事由に当てはまるのか」を、感覚ではなく専門家の診断で確かめることだと思っています。数字が緩和されても、まず建物の状態を正しく把握しないことには、何も始まりません。当事務所の業務の枠を超える部分(耐震診断や劣化診断そのもの)については、必要な専門家へお繋ぎすることも含めて対応しています。

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