はじめに:2026年4月、マンション管理のルールが変わった
2026年(令和8年)4月1日、改正区分所有法(参照:法務省HP)が施行されました(2026年4月1日に施行される改正区分所有法は、マンションの管理・再生を円滑化する抜本的な改正とされています)。平成14年改正以来、約23年ぶりとされており、分譲マンションにお住まいの方・管理組合の役員をされている方にとって、これまでの「常識」が一部通用しなくなる部分があります。
区分所有法は、正式名称を「建物の区分所有等に関する法律」といい、マンションのような集合住宅の基本ルールを定めた法律です。今回の改正の背景には、社会問題として顕在化してきたマンションの高経年化と、区分所有者の高齢化・所在不明化があります。
国土交通省の調査によれば、世帯主が70歳以上のマンションの割合は25.9%で、前回調査から3.7ポイント増加しているとされています。また、築40年超の高経年マンションは2022年末時点で約125.7万戸ですが、20年後の2042年末には約3.5倍の約445万戸に急増すると推計されています。所有者が高齢化し、また所有者と連絡が取れなくなるマンションが今後さらに増えていく、という危機感が改正の出発点にあります。
変更点①:集会決議の円滑化
改正の柱の一つは、集会決議そのものをスムーズにする仕組みです。たとえば大規模修繕など、区分所有権の処分を伴わない事項については、当日出席した区分所有者の多数決で決められるようになりました。これは、マンション管理に無関心で、議決に対して意思の表明をしない区分所有者の存在は無視されるという、大変画期的な改正になっております。
あえて簡単に言えば、「集会に出なかったら無視ね!」です。
所有権という権利は、ご存じのとおり大変強力な権利です。従来はそれに基づき、管理に無関心な区分所有者であっても無視はできず、頭数に含めなければならなかったのです。そのために議決が通らず、建物に必要な修繕などを行えないという不条理が生じていたのですが、今回の改正により、そのような事態が解消される見込みです。
変更点②:建替え・マンション再生の円滑化
建替え決議の要件(区分所有者及び議決権の各5分の4以上)自体は変わっていません(改正法第62条第1項)。ただし、耐震性不足、火災に対する安全性の不足、外壁等の剥落のおそれ、給排水管の腐食等による衛生上の有害のおそれ、バリアフリー基準への不適合のいずれかに該当する場合は、4分の3以上に緩和されます(改正法第62条第2項)
また、所在不明の区分所有者は、これらの決議の分母から除外できるようになりました。従来は所在不明の人も母数に含めなければならず、それだけで決議が成立しにくくなっていた点が是正された形です。
変更点③:管理不全・所有者不明の専有部分への対応
連絡が取れず放置されている専有部分について、裁判所が選任する管理人が対応できる制度が新設されました。処分に伴う売却代金は、法務局の供託所に供託される仕組みです。
マンション標準管理規約も改正されている
施行にあわせて、国が示す管理規約のひな形である「マンション標準管理規約」も、2025年10月に改正されています。標準管理規約への準拠は※義務ではありませんが、総会運営や決議要件など、実務に直結する項目が見直されているため、自分のマンションの管理規約を一度確認しておく必要があります。
※ 義務ではありませんと申しましたが、結局のところ、トラブル(訴訟)になってしまった際には、裁判所は改正区分所有法に照らし判断をするであろうことをふまえると、当然、改正マンション標準管理規約は無視できないということです。
今、管理組合として何をすればいいか
まず押さえておきたいのは、施行日(2026年4月1日)より前の総会決議には影響しないという点(法改正は、改正時点前には適用しない原則から)です。また、施行日後の総会でも、招集手続きが3月31日以前に行われている場合は経過措置により旧法が適用されます。
そのうえで、
①自分のマンションの管理規約が改正標準管理規約とどう違うか
②将来的に建替えや大規模修繕が議題になったときにどの要件が適用されるか
を早めに確認しておくことをおすすめします。
まとめ:まずは「何が変わったか」を知ることから
今回の改正は、「決まらない・進まない」マンション管理から、実効性のある意思決定への転換を狙ったものです。次回以降の記事では、建替え決議の緩和条件や、所在不明者への対応、管理規約の見直しポイントを、それぞれもう少し掘り下げて解説していきます。
