会社を作ろうと決めたものの、「何から手をつければいいのか分からない」という方は少なくありません。定款、公証役場、登記…と聞き慣れない言葉が並ぶだけで、最初の一歩が重く感じられるものです。この記事では、会社設立の全体の流れを、初めての方でもイメージできるよう順番に整理しました。
会社設立とは?個人事業との違い
事業を始める方法には、大きく分けて「個人事業」と「法人(会社)」の2つがあります。会社設立とは、このうち法人を新たに立ち上げる手続きのことです。個人事業と違い、法人格を持つことで「会社」として契約や責任を担えるようになる点が最大の違いです。
法人化のメリットとしてよく挙げられるのは、社会的信用の向上、資金調達の選択肢が広がること、そして節税の余地が生まれることの3つです。ただし、どのタイミングで法人化すべきかは事業の状況によって異なるため、この記事ではまず「会社を作る」という手続き自体の流れに絞って解説します。
会社設立の流れ|基本は7つのステップ
株式会社を例にすると、会社設立は概ね次の7つのステップで進みます。
- 基本事項の決定:商号(会社名)、事業目的、本店所在地、資本金額、役員構成などを決めます。
- 定款の作成:会社の基本ルールを定めた「定款」を作成します。
- 定款の認証(公証役場):株式会社の場合、作成した定款は公証役場で公証人の認証を受ける必要があります。合同会社の場合はこの認証が不要で、その分費用と手間を抑えられます。
- 資本金の払込み:発起人(出資者)の個人口座に資本金を払い込みます。
- 設立登記の申請(法務局):登記申請書や発起人決定書など必要書類一式をそろえ、管轄の法務局に登記を申請します。
- 登記完了:申請から一定期間後、登記が完了し、正式に会社が成立します。
- 設立後の届出:税務署・都道府県税事務所・年金事務所などへの各種届出を行います。税務署への法人設立届出書は、設立の日から2か月以内が原則です。
このうち②定款作成〜③定款認証は、行政書士が代理できる業務範囲です。一方で⑤の登記申請そのものは司法書士の独占業務にあたるため、行政書士単独では対応できません。登記申請は、信頼できる司法書士をご紹介いたします。
株式会社と合同会社、費用はどれくらい違う?
会社形態によって、法定費用は大きく変わります。
株式会社
- 登録免許税:資本金×0.7%、最低15万円
- 定款認証手数料:資本金額に応じて1万5,000円〜5万円(2024年12月の制度改定[参照:日本公証人連合会])により、一定の要件を満たす小規模な会社は1万5,000円まで下がるケースがあります)
- 定款の収入印紙代:紙の定款なら4万円、電子定款なら不要
- 実費総額の目安は、電子定款を使えば18万〜20万円台前半程度
合同会社
- 登録免許税:資本金×0.7%、最低6万円
- 定款認証は不要(この費用がかからない分、株式会社より安く設立できます)
- 定款の収入印紙代:紙の定款なら4万円、電子定款なら不要
- 実費総額の目安は、電子定款を使えば6万円程度、紙の定款なら10万円程度
「まず低コストで法人化したい」という方には合同会社、対外的な信用力を重視する方には株式会社が選ばれる傾向にあります。
なお、市区町村が実施する「特定創業支援等事業」を受けて証明書を取得すると、登録免許税が半額(株式会社7万5,000円、合同会社3万円)になる制度もあります。ただし、この証明書は登記申請時に添付することが条件で、設立後に取得しても差額は戻りません。利用を検討する場合は、早めに自治体の窓口へ相談することをおすすめします。
設立までにかかる期間の目安
準備が順調に進んだ場合、会社概要の決定から登記完了までは、株式会社で概ね2〜4週間程度、定款認証が不要な合同会社はやや短く1〜3週間程度が目安です。ただし、これはあくまで目安であり、書類の不備や法務局の混雑状況によって前後します。
会社設立、行政書士に相談するメリット
行政書士が対応できるのは、主に定款作成の代理、電子定款認証の代理、そして創業融資や補助金申請のサポートです。一方で、設立登記の申請そのものは司法書士の業務にあたるため、登記部分は提携する司法書士と連携しながら進めるのが実務上の一般的な形になります。
初めての会社設立では、「定款に何を書けばいいか分からない」「資本金はいくらにすべきか」といった、書式の話だけでは片付かない相談が多く出てきます。事業目的の書き方一つで、後から必要な許認可が取れなくなるケースもあるため、早い段階で専門家に相談しておくと、後戻りの手間を防げます。
まとめ
会社設立は、①基本事項の決定→②定款作成→③定款認証(株式会社のみ)→④資本金払込→⑤登記申請→⑥登記完了→⑦各種届出、という流れで進みます。株式会社と合同会社では定款認証の有無によって費用も期間も変わるため、どちらの形態にするかは早めに検討しておくとよいでしょう。
本記事の金額・制度内容は執筆時点の情報です。法改正や自治体ごとの運用により変更される場合がありますので、実際の手続きにあたっては公証役場・法務局・税務署、または専門家に最新情報をご確認ください。
専門家からの一言
会社設立の相談で私がよくお伝えしているのは、「登記が終わったらゴールではなく、そこがスタートライン」ということです。資本金の額や事業目的の書き方は、設立後の資金繰りや許認可の取りやすさに直結します。経営者として数字を見てきた立場から、書式を整えるだけでなく、その先の事業運営まで見据えたご相談をお受けしています。
