遺言書の書き方、基本のキから解説

「うちはまだ早い」「財産なんて大したことないから」——遺言書について、そんなふうに感じている方は多いのではないでしょうか。ですが遺言書は、資産の多い少ないに関わらず、家族に余計な負担をかけないための「準備」です。この記事では、遺言書の基本を、種類・書き方・注意点に分けて解説します。

目次

遺言書には3つの種類がある

遺言書と一口に言っても、民法で定められた方式は主に3つあります。

  • 自筆証書遺言:自分で全文を手書きする、もっとも手軽な方式
  • 公正証書遺言:公証人が作成し、公証役場で原本を保管してもらう方式
  • 秘密証書遺言:内容を誰にも見せずに、存在だけを公的に証明してもらう方式

このうち実務でよく使われるのは自筆証書遺言と公正証書遺言の2つです。秘密証書遺言は要件を満たすのが難しいわりにメリットが薄く、現在はほとんど利用されていません(後述します)。

いちばん身近な「自筆証書遺言」の書き方

自筆証書遺言は、紙とペンと印鑑があれば、今日からでも作成できます。ただし民法968条(e-Gov法令検索)で、次のルールが定められています。

  • 遺言書の全文・日付・氏名を自分の手で書く(パソコンでの作成や代筆は無効)
  • 書いた後に押印する
  • 日付は「令和8年8月」のような曖昧な書き方ではなく、日にちまで特定できるように書く

「全部手書きは大変そう」と思われるかもしれませんが、2019年の法改正で、財産目録(不動産や預金の一覧)についてはパソコンでの作成や通帳のコピー添付が認められるようになりました。ただしこの場合、目録の全ページに自分で署名・押印する必要があります。

また、内容を訂正したいときにも、二重線を引いて訂正印を押すだけでは不十分です。変更した場所を指示し、変更した旨を欄外に付記して署名するという、厳格な手順(民法968条3項)を踏まないと、訂正自体が無効になってしまうことがあります。

書いた遺言書を法務局に預ける「保管制度」という選択肢

自筆証書遺言の弱点は、自宅で保管する場合、紛失・改ざん・発見されないといったリスクがあることです。この弱点を補うのが、2020年7月から始まった「自筆証書遺言書保管制度(参照:法務省HP)」です。

  • 手数料は遺言一通につき3,900円
  • 法務局(以下の遺言書保管所)に本人が出向いて申請する(代理申請は不可)
  • 遺言書の住所地を管轄する遺言書保管所
  • 遺言者の本籍地を管轄する遺言書保管所
  • 遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所
  • この制度を利用すると、相続開始後の家庭裁判所での「検認」が不要になる

「検認」というのは、遺言書の状態を裁判所が確認する手続きのことで、通常の自筆証書遺言では相続開始後に必要になります。これに1ヶ月以上かかることもあるため、保管制度を使って検認を省略できるのは、相続人にとって大きなメリットです。

より確実に残したいなら「公正証書遺言」

自筆証書遺言よりも確実性を重視するなら、公正証書遺言という選択肢があります。公証人が遺言者から内容を聞き取って作成するため、方式の不備で無効になるリスクがほとんどありません。原本は公証役場で保管され、検認も不要です。

ただし、次の点は押さえておいてください。

  • 証人が2人以上必要(推定相続人やその配偶者など、利害関係のある人は証人になれません)
  • 手数料は財産の内容や金額によって個別に決まるため、一概に「いくら」とは言えません。目安として、全体で数万円〜十数万円程度になるケースが多いですが、正確な額は公証役場に確認するのが確実です

あまり使われない「秘密証書遺言」

秘密証書遺言は、内容を誰にも知られずに、遺言書の「存在」だけを公的に証明してもらう方式です。パソコンでの作成も可能ですが、公証人1人・証人2人以上の立会いが必要な上、内容は公証人にチェックしてもらえないため、方式面は担保されても内容面の不備は防げません。さらに検認も必要で、法務局の保管制度も使えません。手間とコストのわりにメリットが少ないため、実務上はほとんど選ばれていない方式です。

遺言書でつまずきやすいポイント

  • 日付を「〇年〇月吉日」のように曖昧に書いてしまい、無効になる
  • 押印を忘れる、または花押(サイン風の記号)で済ませてしまい、押印と認められない
  • 「妻に家を、長男に預金を」など、財産の特定が曖昧で、結局相続人同士で話し合いが必要になってしまう
  • 遺留分(法定相続人に最低限保障された取り分)への配慮がなく、かえって争いの火種になる

とくに最後の遺留分は見落とされがちです。「全財産を長男に」といった内容にすると、他の相続人の遺留分を侵害し、後から遺留分侵害額請求というトラブルに発展することがあります。

まとめ:まずは「誰に、何を」を書き出すことから

遺言書というと身構えてしまいますが、最初の一歩は「誰に、何を残したいか」を紙に書き出してみることです。方式を選ぶのはそのあとで構いません。手軽さを取るか、確実性を取るかで、自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらが合うかも変わってきます。

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