建設業者が法人成りするときに知っておきたい注意点 (会社設立と建設業許可の関係)

目次

はじめに

「そろそろ法人にしようと思うんだけど、何から手をつければいい?」

個人事業主として現場を切り盛りしてきた建設業の方から、こうした相談を受けることが増えています。社会的信用の向上、金融機関からの融資のしやすさ、税制面のメリット――法人成り(法人化)を考える理由はさまざまです。

ただし、建設業には他業種にはない特有の注意点があります。特に「建設業許可」を持っている場合、法人成りのタイミングを間違えると、許可が一時的に途切れてしまい、工事を請け負えない空白期間が生じるリスクがあります。

この記事では、一般的な会社設立の流れをおさらいしつつ、建設業者が法人成りする際に押さえておくべきポイントを、現場で10年以上経営に携わってきた経験も交えて解説します。

会社設立の基本的な流れ

まずは会社設立 (株式会社を想定)の大まかな流れを確認しておきましょう。

  1. 基本事項の決定 — 商号、事業目的、本店所在地、資本金額、役員構成など
  2. 定款の作成・認証 — 会社の基本ルールを定め、公証役場で認証を受ける
  3. 資本金の払込み — 発起人名義の口座に資本金を払い込む
  4. 設立登記の申請 — 法務局に登記申請を行い、登記が完了した日が会社の設立日になる
  5. 各種届出 — 税務署、都道府県・市町村、年金事務所などへの届出

ここまでは一般的な会社設立と同じですが、建設業の場合はここに「建設業許可をどう扱うか」という論点が加わります。

建設業特有の落とし穴

① 資本金と許可要件の関係を正しく理解する

建設業許可には「財産的基礎 (財産的基礎を有すること)」という要件があり、一般建設業許可では「自己資本が500万円以上であること」が求められます。

ここで誤解されやすいのが、「資本金」と「自己資本 (純資産)」は同じではないという点です。自己資本とは直近の決算における貸借対照表の純資産合計を指すため、設立したばかりで決算を迎えていない会社の場合は、資本金の額がそのまま自己資本として扱われます。つまり、設立直後に許可を取得したい場合は、資本金を500万円以上に設定しておくのが最もスムーズな方法です。

一方、既に決算を終えている会社であれば、資本金が500万円未満でも、利益の積み上げによって純資産が500万円以上あれば要件を満たせます。逆に赤字が続いていれば、資本金が500万円あっても純資産が要件を割り込むこともあり得ます。「資本金さえ用意すればいい」という単純な話ではない点に注意が必要です。

② 個人事業主時代の許可は自動的には引き継がれない

以前は、個人事業主が法人化する際、いったん個人の許可を廃業し、法人として新規に許可を取り直すしかありませんでした。この場合、審査期間中は無許可の空白期間が発生し、その間は500万円以上の工事を請け負えなくなってしまいます。

令和2年10月の建設業法改正により、この問題を解消する「事業承継の認可制度」が新設されました。個人事業から法人への事業譲渡という形をとり、あらかじめ許可行政庁の認可を受けておくことで、

  • 空白期間なく許可を引き継げる
  • 許可番号がそのまま維持される
  • 個人時代の許可の残存期間も引き継がれる

といったメリットがあります。ただし、この認可は事業譲渡の効力が発生する前に受けておく必要があり、法人を設立してから慌てて申請しても間に合いません。また、個人で複数の業種の許可を持っていた場合は、原則としてすべての業種をまとめて承継する必要があるなど、細かな要件もあります。

法人成りを検討し始めた段階で、「許可を承継するのか、新規に取り直すのか」を早めに決め、逆算してスケジュールを組むことが重要です。

③ 決算変更届・経営事項審査(経審)のタイミングとの兼ね合い

公共工事の入札を視野に入れている場合は、経営事項審査(経審)のスケジュールも意識しておく必要があります。法人成りのタイミングによっては、決算期の設定や決算変更届の提出時期が経審のスケジュールに影響することもあるため、あわせて確認しておくと安心です。

(経審の詳しい仕組みについては、[経営事項審査(経審)解説記事]へ)

現場を知る立場から

私自身、現場で10年以上経営に携わる中で、「制度としては知っていても、実際の資金繰りや工事のスケジュールとどう折り合いをつけるか」という部分でつまずくケースを数多く見てきました。法人成りは書類上の手続きだけでなく、実際の工事の受注状況や資金繰りと密接に関わってきます。制度の理解と現場の実情、その両方を踏まえて進めることが、無理のない法人成りにつながると感じています。

まとめ

建設業者の法人成りでは、一般的な会社設立の手続きに加えて、

  • 資本金と自己資本(財産的基礎)の違いを理解すること
  • 許可を承継するか、新規に取り直すかを早めに判断すること
  • 経審のスケジュールとの兼ね合いを確認すること

という3つのポイントを押さえておくことが重要です。

建設業許可そのものについては[建設業許可の記事]、経審については[経営事項審査(経審)解説記事]もあわせてご覧ください。

法人成りのタイミングや進め方でお悩みの際は、お気軽にご相談ください。

建設業許可の新規取得・更新でお困りの方は、こちらの取り扱い業務ページもご覧ください。
建設業許可(すみれ法務事務所)

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